2003年10月24日金曜日

文章を削るということ

かなり昔、テレビで藤本義一さんが言われていたと記憶しているが、作家はとにかく文章を削る。削って削って、さらに削る。そして内容の濃い文章を作る。例としてこんな文章が挙げられていた。「私が○○と結婚し夫婦となってから20年の月日が経過した。その間・・・」という文章を削るのだが、例えば、妻とは結婚しているのが当たり前だから、結婚という言葉は省ける等々。最終的に出来上がった文章は→「妻との20年、・・・」。目の覚める思いだった。逆にしゃべる時は濃縮してある文章を延ばせば良いから簡単だ。「ふえるわかめちゃん」みたいにお湯をかけてやれば何倍にも膨らます事が出来る。作家がしゃべるのは簡単なのだそうだ。
医者という職業もとにかく文章を書く事が多い。患者さんの側にいるより文章に追われているほうが多いとも言える。診療情報提供書、レセプト、入院証明書、介護保険意見書、身体障害者申請書、特定疾患申請書などの書類、カルテ、学会発表、論文・・・。カルテなどはどうしても必要最小限な所見の殴り書きになってしまうが、逆に診療情報提供書などは分かりやすくないと意味がない。病歴の長い患者さんや難しい疾患の患者さんの場合、書く事が多すぎてまとめるのに時間も労力もかかってしまう。そして書きたい事は多いが書き過ぎると論点がぼけてしまう。取捨選択して重要な事だけが分かりやすくまとめないと意図が伝わらない。また、学会や論文などのabstractは非常に短くまとめる必要がある。重要事項をピックアップすると字数制限の2〜3倍の大きさになる。これをさらに焦点をぼかさず削るにはその事項への深い知識が必要である。つまりうまくまとめられるという事は物事をよく知っているという事に他ならない。
いつも何か文章を書くと、とかく修飾語過剰の文章が出来やすい。足すのは簡単なのだ。そこから推敲して削っていく事が難しい。削って内容が薄くなったり、分かりにくくなったのではしょうがない。読みやすく濃度の濃い文章を作りたいものだといつも思う。僕は文章を書くのが大嫌いである。色々こういう文章を書いて練習してみたりするのだが・・・・。その拙い出来は上下やこの文章をお読みになれば理解されることであろう。

0 件のコメント: