2003年10月23日木曜日

ヒエログリフ入門・吉成 薫著


(書評)小さい頃から「文字」に興味があった。幼少期、祖父の家には世界旅行の本があり、巻末に簡単な会話のページがあった。そのページには現地の文字が表記してあり、その異国の文字に魅かれそのページばかりを見ていた。この記号のようなものが理解できたら住むところも生活も全く異なる人たちと意志疎通が出来るかと思うと、写真の中の彼らが身近に感じた。それがたとえ生きている時代が異なってもそうなのだ。古来から人類は言葉を使って様々な事柄を残そうとしてきたが、古代エジプト文字の「ヒエログリフ」もそのひとつである。ピラミッドやツタンカーメンなどのエジプトの遺跡に書かれている、人や鳥などの象形文字がそれだ。
僕は約10年前にとある書店でこの本に出会った。「はじめに」に記されているのだが「この本の目的はヒエログリフを読めるようにすることである。簡単な文法とある程度の単語さえ知っていれば、誰にでも読みそれを理解することが出来る」とある。もー、興奮したね。
古来からヒエログリフは長く謎に包まれたままであったが、1799年ナポレオン群の遠征の際にロゼッタストーンが発見され、ヒエログリフ、デモティック(一般エジプト人の言葉)、ギリシャ語で同一の内容が書かれたこの石によって解読が達成する。この解読にも長い年月を要し、多くの学者が断念しているが、最終的に解読を達成したのはジャン・フランソワ・シャンポリオンである。彼がヒエログリフが表意文字である以上に表音文字であることを提唱し、一気に解明が進んだ。1822年のことであった。彼の死後も多くの学者の努力によって現代では古代エジプト文字はほぼ完全に読みこなせるということだ。ヒエログリフでは白い丸(カルトゥーシュ)に囲まれているのが王の名前であり、文章は文字の頭の向いているほうから読み始める。文字は意味を表すばかりか音を表し、主に表音文字として機能する。ただ母音がなく子音字のみであり、発音は正確にはわかっていないため便宜的なものであるらしい。この本には名詞、形容詞、動詞、疑問詞など文法の解説、死者の書、王墓に書かれた文章、医学書、生活に疲れたものの詩などを例文にとり、その翻訳を通じヒエログリフの理解を目指す。さらには、名前をヒエログリフで書いたり、日記を書いたり、「ぞうさん」や「さっちゃん」の歌詞や、果ては「方丈記」までヒエログリフに訳してみたりと・・・・遊び心も全開で面白い。巻末には辞書までついており、ヒエログリフを勉強される方にも白眉の書と思われるが、そうでない方も古代エジプトに思いを馳せるのにおもしろい内容である。ヒエログリフに興味のあるあなたに絶対のお勧めであり、マニアの域を超えたすごい本である。僕はエジプトに行く前にちょこちょことしか読んでいなかっただけに、実際の遺跡の文字はさっぱり理解できず残念だったが、次回訪れる時にはもっと勉強して少しは理解できるように・・・無理か。
ヒエログリフ入門 古代エジプト文字への招待・吉成 薫著
弥呂久ブックス・1993年新装一刷発行
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Egyptian Hieroglyph Room・・・K.Takaiさんのヒエログリフのサイト。すごくよく出来ています。この方も同書との出会いがヒエログリフのきっかけと語っておられ、興味深いです。

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