2004年3月5日金曜日

Rebekka Bakken, Julia Hulsmann / Scattering Poems


(新譜、Jazz)Rebekka Bakken, Julia Hulsmann / Scattering Poems
最近注目している女性ボーカリストRebekka Bakken。2002年にWolfgang Muthspiel(ギター、エレクトロニクス)と組んだアルバム「Beloved」はホントに名作で当時よく聞いたものだった。Wolfgang Muthspielの深く透明感のある音世界にRebekka Bakkenの声。Wolfgang Muthspielの作り出す音はまるで慈しむようにRebekka Bakkennの声を包み、その中で彼女はある時は慈悲深く、ある時は叫ぶように自由に歌い上げる。蜜月のような素敵なアルバムであった。
さて先日某CDショップに行った時、店内でかかっていた歌声に聞き惚れて迷わず購入したのが今作「Scattering poems」である。その時同一人物と気付かなかったのは恥ずかしいのだが(覚えにくい名前だし・・・ぶつぶつ)、こういう形で再開するとは思わなかったというのが正直なところで、同時に僕の好きな声のタイプは変わらないのだなと再確認してみたり。
さてRebekka Bakkenは1970年ノルウェー産まれのシンガーソングライターである。ニューヨークで活動していたが、現在はウイーン在住らしくヨーロッパのアーチストとのコラボレーションが多いようだ。Wolfgang Muthspielはオーストリア人だし、今作のJulia Hulsmannもドイツのジャズピアニストである。この「Scattering Poems」はそのJulia Hulsmannのピアノトリオと組んだ作品で、アメリカの詩人E.E.Cummings(1894-1962)の詩に曲をつけたものである。E.E.Cummingsは「私」を「i」と表現するなど小文字表現を使い、句読点の省略、語間の空白、口語的なリズムの採用、表現の短縮化など独特な自由詩の作風を持つ。そのようなリズムを持った詩だからこそ曲をつけるのは容易であったと彼女らは語る。Julia Hulsmannのピアノトリオとの真剣勝負の如くRebekka Bakkennの伸びやかで芯のあるハスキーなボーカルが対峙する。ポップでありながら緊張感がありスリリングである。最近は「Beloved」と交互に毎日のように愛聴している。

material records(Wolfgang Muthspielのレーベル、「Beloved」はここから発表)
ACT(「Scattering Poems」はなんとACTから発売)
E.E.CummingsのUnofficialなサイトE.E.Cummingsの詩の紹介
UniversalのRebekka Bakkenのホームページ(2003年Universalから発表されたソロアルバム「The Art Of How To Fall」も音楽的に広がりのあるよい出来の作品だが、僕としては少しプロダクションされすぎで面白みに欠けるように思われる)

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